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2014年 05月 04日

カフェから眺める京都の暮らし

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私が喫茶店に行く理由。

それはただおいしい珈琲をいただくためだけではなく、空腹をただしのぐためでもなく、
喫茶店という日常の中の非日常の空間の中に自分の身をゆだねるため。
腰をかけるのにちょうど良い椅子、思考をかき乱すことのないやさしい音楽の中で
おいしい珈琲をいただいたのなら、それは至福のひと時。
「あれもしよう、これもしよう」と、色々なアイデアが頭の中にぱっと湧き出てきて、
気が付けば手にはペンを握り、思いをつづっているのです。
これはきっと、喫茶店の魔法。
この心地良い魔法にかけられるため、私はこうも足しげく喫茶店に通っているのだと思います。
京都には、溢れるほどカフェや喫茶店と呼べるものがあるといいますが、長い年月を越えて
なおも人々に愛され続けている喫茶店には、そのたしかな理由があります。
喫茶店の扉を開けてみれば、その理由が見えてくるはず。
さぁ、レトロ喫茶案内のはじまりです。


京都で暮らし、毎年繰り返される季節の移り変わりを肌で感じていると、
目まぐるしく変わってゆく時代の流れの中で、ずっと変わらないを続けていく京都と、
少しずつ新しいものを受け入れて丁寧に変わっていこうとする京都、その両方の「京都」がここに存在していることに気付きます。
それは京都の喫茶店だって同じだと、ある日通りがかった喫茶店が教えてくれました。
「喫茶セブン」と書かれた看板が誇らしげにこちらを見下ろし、大きな窓ガラスから覗ける背の高い天井からは
内側の空間の居心地の良さを容易に連想させる、その喫茶店の名は「喫茶マドラグ」。

約50年間続いたという喫茶セブン。
よく前は通っていたのだけれど「よそ者は来てくれるな。」と言わんばかりに、店の内側にはカーテンがかけられ、
常連さんたちが集う憩いの場となっていた喫茶セブンに、結局私は一度も足を踏み入れぬままに
シャッターは閉められてしまいました。
その後半年間放置されていたかつての喫茶店に、再び息吹をよみがえらせたのは、山崎さんご夫婦でした。
「自分たちの思い描いていた喫茶店に、喫茶セブンは近かった。喫茶セブンの姿を残していかなければならないと思いました。」
とオーナーの山崎さんは言います。
かつての喫茶セブンの雰囲気は変えずに、変えるところは丁寧に変えていく。
椅子は、木屋町にあった「名曲喫茶みゅーず」のものを譲り受け、壁は土色に統一、大きなカウンターには白い石を貼って、
だんだんと自分たちの頭の中のイメージを形にしていく。
人柄の良かった先代のマスターの煎れる極上の珈琲を目当てにしていた舌の肥えた常連さんたちも、
今では文句を言わずに自分の煎れた珈琲を残さず飲んでくれるのがうれしいと教えてくれた山崎さんの笑顔は
まるで少年みたいで、これからも古典喫茶を残していきたいと願う心がその笑顔に表れていました。
ご近所の常連さんと、白い毛むくじゃらのわんちゃんが、いつものようにここへやってきた頃、
私は、ひんやりとした地面に寝そべるわんちゃんに軽く挨拶をして、喫茶マドラグを後にしました。




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喫茶マドラグ
京都市中京区押小路通西洞院東入ル北側
075-744-0067






by sucrecuit | 2014-05-04 20:29 | KYOTO/ 京都に暮らす


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