
物心がついた時から、何かお祭があるハレの日には食卓に鯖寿司が並んでいるせいか
鯖寿司を見ると、これから何かが起きるような期待感から心が弾み、なんとなく幸せな気分になります。
子供の頃、自分は鯖アレルギーだと信じて、どんなハレの日にも頑なに鯖寿司を食べることを拒んでいた兄のために
私は鯖寿司係を買って出て、兄の分までパクパクと鯖寿司を平らげていました。
鯖寿司が京都特有のものであると知ったのは、それから大分、恥ずかしくなるぐらいにずいぶん後のこと。
東京に出向いた際、お寿司屋さんで鯖寿司を注文したら、イカやマグロのような感覚で
新鮮な鯖の切り身がシャリの上にちょこんと乗ったお寿司が出てきて
それが自分の思っていた鯖寿司とは違い、衝撃を受けたのです。
京都の鯖寿司は、三枚に下ろした鯖を酢と塩で締め、寿司飯の上に一枚ごと乗せて竹の皮で包んだ棒寿司のことで、
かつては福井県若狭湾で採れた鯖が洛北の険しい「鯖街道」と呼ばれる道を通り、人の足で京都まで運ばれてきていました。
京都では端午の節句や祇園祭、秋祭りなど季節を問わず、何かお祭りのあるハレの日には鯖寿司をいただきます。
各家庭で鯖寿司を作って、親戚などに配ってハレの日を共に祝う習慣がありますが
今は家庭で作らずに、鯖寿司をお店で買って祝うことも多いです。
脂の乗ったとびきりおいしい鯖寿司をいただきたい時は、1781年に創業した老舗<いづう>まで足を運びます。
丁寧に巻かれた昆布をこれまた丁寧にはずし、鯖寿司をゆっくりと口まで運びます。
<いづう>では季節毎に変わる包み紙を見るのも楽しみの一つ。