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2016年 07月 17日

ロンドンでの出産

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Photo by iPhone




先日ロンドン市内の病院で3,222gの男の子を出産しました。
決して安産とは言えない過酷な出産でしたが、今は母子共に健康です。
私たち夫婦の元に新しい命を授かりたいと強く望んでから、途方もなく長い時間に思えた時期もありました。
何度も打ちのめされながら、ようやくこうして新しい命を授かり、この子が私たち夫婦のところに生まれてきてくれたのも、今では最初から仕組まれていた運命なのだと思います。


ロンドンでの出産はプライベート病院ではなく、医療費をすべて無料で提供するNHS(National Health Service)の病院を利用しました。
出産前日の夜中3時頃から不規則な前駆陣痛が始まり、朝方6時頃からいよいよ前駆陣痛の間隔が狭まり、イギリスの出産予定日より一週間も前でしたが、今日本陣痛が始まるかもしれないとの予感がありあわてて飛び起きました。前駆陣痛の間隔が10分間隔になり病院に電話してみましたが、「陣痛の間隔が5分間隔になってからもう一度電話するように」と言われ、それからしばらく不規則な陣痛が続き自宅で待機する状態が続きました。その日の夜、陣痛の間隔はまだ10分間隔でしたが、いよいよ痛みが強くなってきたためもう一度病院に電話し、今から病院に行っても良いか確認をしたところ「この電話中に陣痛が来ていないようだから、陣痛が3分から10分間隔になったらもう一度電話するように」と言われ、結局朝から晩まで陣痛は強くなってはいるものの病院に行かせてもらえない状態が続きました。

電話を切った後しばらくして陣痛がそのようになったので今度は「今から行きます」と病院に電話を入れ、夜10時に旦那と二人で車で病院に向かいました。実はその日旦那はとある事情でまだドイツにおり、私が陣痛らしきものがきたとの連絡を受け、病院に行く2時間前にドイツから飛行機でロンドンに帰ってきたところでした。


そんなどたばたの中病院に着き、子宮口を測ってみるとまだ子宮口は2cmしか開いておらず、通常は2cmだと自宅に一旦戻されるようでしたが、子宮口が大分柔らかくなっていていつ開いてもおかしくないからと、一旦病棟で待機することになりました。病棟は6人部屋で私の他にも本陣痛待ちの妊婦さんが5名、満室の状態でした。病棟での待機中はgas&airで痛みを逃れることにしましたが、徐々にそれでは耐え切れなくなり、深夜また子宮口を測るとすでに6cmから7cmの開きになっていました。
「You will be a mum today.」という助産師さんからの言葉に涙が流れてきました。大泣きしながらそのまま分娩室へ移動。その頃はgas&airのせいで夢と現実との境目が分からなくなっていました。

病棟からすぐに分娩室に移動できたのですが、そこからなかなか出産に進みませんでした。陣痛は強くなる一方でしたが子宮口がそこからなかなか開かず、ずっと痛みに耐え、朝方の4時にやっと子宮口が8cmから9cmの開きになりました。子宮口が10cmになるまでまだ時間がかかりそうで出産までに体力を消耗してしまいそうだったのでepidural(麻酔)の投入をお願いしましたが、なぜかなかなか投入してもらえず、朝7時にやっとepiduralを投入、一時間ほど出産に向けて体を休めることになりました。
そして朝7時30分、子宮口は10cmに。その一時間後にようやくいきみ始めました。
そこから永遠のように感じましたが、午前10時57分、無事に3,222gの男の子を出産しました。


イギリスでは生まれたばかりの赤ちゃんをそのままお母さんの胸の上に乗せる「カンガルーケア」を行うのが一般的です。まだ自分がこの子を産んだことが信じられないまま、生まれたての赤ちゃんをどんっと胸の上に乗せられてしばらくは不思議で茫然としたまま過ごしました。
赤ちゃんが無事に生まれカンガルーケアを行い、それで出産が無事に終わるはずでした。ですが私にとって予想外のことが起こりました。出産後、子宮内の胎盤が自動的に剥がれ落ちてくれなかったのです。このまま胎盤が出てこないようなら手術室で胎盤を手動で取り除く処置を行わなければならない旨、その手術室が今空いておらずしばらくこの状態で待たなければならない旨、またその危険性などの説明を受けサイン。この時ほど日本で出産しておけば良かったと思ったことはありません。


結局子宮内に胎盤を残したまま3時間半待ち、ようやく手術室に移動。再度epiduralを投入し、下半身を麻酔にかけられた状態で手動で胎盤を取り出す処置が行われました。下半身の麻酔にかかっているものの意識は普通にありました。処置が始まり、しばらくして急に他のDoctorたちがドタバタと私のいる手術室に集まってきました。嫌な予感がしました。なんとなくですが、Doctorたちの様子から予想外の大量出血をしているのだと分かりました。そのあと輸血されているのも分かりました。徐々に気持ち悪さも増し、もしかしたらこんなところで死ぬのかもしれないとさえ思いましたが、その予感はDoctorたちの徐々に和やかになっていく空気でなくなっていきました。

処置は無事に終わり、私は体の色々なところに管を付けられた状態で個人病棟に移されることになりました。後からの説明で3.5ℓの大量出血をしたこと、2ポーションの輸血をしたことを知りました。イギリスの病院では出産後1日で自宅に帰るのが普通ですが、私の場合その後退院したのは出産の3日後でした。


退院当日、輸血はしているものの大量出血のせいで貧血で歩くのもやっとでした。ですが自宅に戻りベビーベッドの中で眠っている赤ちゃんを見ると、まだ自分がこの子を産んだことが信じられなくて涙が溢れてきました。「感動した」という言葉だけでは説明ができない感情でした。今まで味わったことのない感情と貧血のせいで倒れそうになりました。
「今日のことは絶対忘れたくない」そう思いました。


異国の地での出産、しかも初めての出産で不安だらけでしたが、この経験は私の人生にとって財産になると思っています。今ではロンドンで、イギリスで出産して良かったと思っています。これから新しい家族と共に精一杯頑張っていきたいと思います。





by sucrecuit | 2016-07-17 07:19 | ロンドン暮らし


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